天声人語で国語力をアップ

天声人語を読み直すのに、新聞の切り抜きや書き写しノートを持ち歩くのが面倒なので、ブログにアップしています。

日韓の風通し

天声人語 2019/8/16より

 

この夏、小さな扇風機を手にする人をまちで見かけるように なった。最近のヒット商品だそ うで、ミニ扇風機とも携帯扇風機とも呼ばれる。同じものが韓国では一足早く流行していたという。厳しくなるばかりの暑さはお互いさまのようだ▼韓国のフェミニズム小説「82年生まれ、キム・ジヨン」も、昨年末から今年にかけて、日本で売れて話題になった。女性を脇に追いやる社会のあ り方を静かに暴いているのだが、日本と似ているのだ。男の身には読んでいて後ろめたい気もしてくる▼男子学生が牛耳る大学のサークルや、就職での差別、職場での給与格差などが出てくる。子どもを持とうという夫の言葉に主人公はこう 言い返す。 私は健康も同僚も未来も失うかもしれないのに「あなたは何を失うの ?」▼日韓が抱える社会問題には重なるところがある。そう感じることは少なくない。先日の紙面では「隠遁型ひとりぼっち」と呼ばれる韓国の引きこもりの話 が出ていた。ソウル郊外に、彼らを支授する日本の団体があるという▼少子化も日本を上回る速度で進んでおり、地方の過疎化も深刻だ。学び合い、知恵を出し 合える隣国のはずなのに、現状は国と国とがにらみあい、人と人との間にも亀裂が入る。お互いの国への旅行にも二の足を踏むとすれば、あまりに不自然である ▼日韓の外相による会談が今月中に行われる見通しだ。風通しのひどく悪くなった関係に少しでも風が吹かないものか。ミニ扇風機でも手向けたくなる。

 

82年生まれ、キム・ジヨン