天声人語で国語力をアップ

天声人語を読み直すのに、新聞の切り抜きや書き写しノートを持ち歩くのが面倒なので、ブログにアップしています。

土用波による遭難

天声人語 2019/8/14より

「土用」が頭につく言葉は少なくない。食べ物だとまずウナギが思い浮かぶが、「土用卵」「土用蜆」などもある。暑さにまいる夏の時期、栄養のあるものを口にして、体力をつけようという発想である▼天候についての言葉もある。「土用凪」は風のない猛暑のことで、涼しい風が吹いてくると、その風は「土用あい」と呼ばれる。しかし「土用波」となると警戒が必要だ。夏の土用の時期に起きやすい大きな波のことを、そう言い習わしてきた▼この土用波、遠洋にある台風のしわざであることが分かっている。土用の時期はすでに過ぎたものの、台風10号の北上により危険な大波が各地で起きたようだ。太平洋側の海岸では一昨日、死者や行方不明者が相次いだ▼千葉県館山市では5人の男性が沖合に流された。3人は自力で浜に戻ったものの、18歳と19歳の2人が行不明になったという。海岸に打ち寄せた波が沖に戻ろうとするときに、「離岸流」という強い流れが発生したとみられる▼日本ライフセービング協会のホームページを見ると、離岸流は1秒間に2メートルもの速さで進むことがある。五輪メダリスト級の水泳選手でも逆らって泳ぐのが難しいというから、波の動きには十分に注意したい▼やきもきするのは、台風10号の遅さである。本州が強風域にすっぽり入るほどの超大型の台風が、自転車ほどのスピードで進んでいる。徳島での阿波踊りなど各地のイベントへの影響も心配だ。気持ちをゆるめられない季節である。

春夏秋冬 土用で暮らす