天声人語で国語力をアップ

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庄内藩で起きた藩主転封阻止運動

天声人語 2019/2/23より

「百姓たりといえども二君に仕えず」。農民たちがのぼりをはためかせ、ほら貝を吹き鳴らす。江戸後期の天保年間、庄内藩で起きた藩主転封阻止運動に関する史料を、地元山形県鶴岡市の致道博物館で見た(3月13日まで)▼世に言う「三方国替え」騒動である。庄内、長岡、川越の3藩主は玉突きで交代せよ。幕府の命令が、庄内の農民たちの抵抗を呼び、翌年撤回されるほでを絵と文で伝える。地元出身藤沢周平の小説『義民が駆ける』でご存じの方も多いだろう▼展示中の史料は数点だが、庄内の歴代藩主と領民の信頼はかなり厚かったようだ。ただ蜂起にはより切実な事情があった。「新たに来る殿様は苛政で知られた。血も涙もない年貢の取り立てを領民は恐れたようです」と館長の酒井忠久さん( 72 )。転封を免れた藩主酒井家の18代当主である▼重税や飢えに苦しみたくなければ、危険を冒して幕府に訴え出るほかない―。領民たちは幾度も江戸へ向かい、家老らに駕籠訴を敢行した。無謀とも思える実力行動は、江戸で忠義の拳と評判を呼ぶ。他藩主たちをいたくうらやましがらせた▼驚くのは、村々の指導者たちの戦略である。江戸に出たら正装などせず野良姿をさらして同情を引け。国替えに巻き込まれた他藩の農民をたきつけよ。そんな策を連発したという▼幕命撤回1841年、盤石だった幕府の権威が揺らぎつつあったころだ。庄内の農民たちのしたたかさと情勢判断力、果敢な行動に改めて感じ入る。

 

義民が駆ける